燕山荘でテント泊
街の商店街に何とか銀座と呼ばれるところがあったりしますが、北アルプスに銀座があるとは思ってもいませんでした。しかも表と裏があります。槍ヶ岳や穂高連峰の南北に連なる山々を中心に、その東側にありアクセスしやすく人の多い表銀座と、その西側にあり山深く人も少なめという裏銀座です。
今回で2回目の北アルプス。テントを担いで2泊3日で表銀座を歩くことにしました。燕山荘
(えんざんそう)のテント場を起点に大天井岳
(おてんしょうだけ)まで往復するコースです。
登山口へ
今回も夜に家を出て高速道路のS.A.で仮眠をとり、朝早く出発します。前回の唐松岳で失敗したガソリンは抜かりなく、一路駐車場を目指し、山あいの曲がりくねった道を走っていきます。私は車酔いをするので、他人の運転する車やバスやタクシーだと登山口まで辿り着けるのかかなり不安な山道です。山の麓はそんな所ばかりですが…。駐車場は平日にもかかわらず多くの車で埋まっていました。
登山口までは10分ほどの舗装路歩き、そこできちんと準備をすることにして、だいたいの支度を整え、ゆるく縛った靴紐で歩きはじめます。
登山口では多くの人が登る準備をはじめていました。それぞれいろんな装備、いろんな格好で、グループで歩きはじめる人たち、ひとりで淡々と準備をしている人、談笑している人たち、さまざまな人たちが目に入ってきます。今回でまだ2回目の北アルプスなので、これまでの山に登るのとは全く違う敷居の高さを感じ、場違いな場所に来てやしないかと、周りの様子が気になってしまいます。
体のストレッチをして、靴紐を締め直し、パックのベルトを締め、肩と脇の紐を引き、さあ出発です。
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登山口 |
北アルプス三大急登
今日は山の東側から登り、稜線にある燕山荘を目指しますが、この人の多さはさすがに人気のある表銀座へ通じる道だなという感じがします。次から次へと人に出会います。
山登りでの登り優先というルールも守られないことが多く、走って下りてくるような人もいますし、後ろから無理やり追い抜こうとする人もいたり、お互いなかなか自分のペースで登ることはできません。道が広ければいいのですが、狭い箇所も多く、土がむき出しになって滑り歩きにくい所もあります。また、この登山道は北アルプス三大急登のひとつと言われるそうで、テント泊装備を持っているせいもありますが、ペースを上げることはできず、しかも歩いているとずいぶん暑く、なかなか骨が折れました。Aさんはずいぶんつらそうですが、第一ベンチ、第二ベンチ、第三ベンチ、富士見ベンチとたどり、休みながら何とか目的地まで2/3ほどの地点にある合戦小屋へ着きました。
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第一ベンチ |
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第二ベンチ |
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富士見ベンチ |
合戦小屋から燕山荘へ
ベンチに腰掛け休憩していると、小雨が降ってきたので、パックにレインカバーをかけ、レインコートを着込みました。水分補給をしながら行動食を食べしばらく休みます。
歩きはじめはなかなか足が上がりませんが、ゆっくり登っていきます。気温は高くはなさそうですが、レインコートを着ているので暑いです。木々がまばらになり、空が広くなってきましたが、あたりはガスに覆われ何も見えません。ここまでけっこう時間がかかり、人気の山なのでテントを張る場所がなくなってしまうと困るということで、結局私だけ先に行きテントを張って待つことにしました。
ひとりになり少しペースを上げて(と言ってもたかが知れていますが…)歩いて行きます。山は相変わらずガスに包まれ、景色はほとんど見えませんが、そのうちに登山道の雰囲気が変わり、やっと燕山荘が見えてきました。すぐ右手にはテント場がありますが、心配するまでもなく、まだまだ空きはありそうです。
そして、稜線に出てみると、これまで登ってきた登山道とは景色が一変し、青空も見えていました。とても爽やかな景色で、こんなにも景色が違うものかと、やっと着いた喜びと、疲れているのも相まって感動もひとしおです。
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稜線の向こう側の景色 |
山小屋とテント場
それにしても燕山荘は山小屋という言葉からは想像できないくらい立派な建物です。小屋の周りは多くの人で賑やかで、ビールジョッキを掲げている人たちもいます。さすが北アルプスの銀座は違うなと感じます。受け付けでテントの申し込みをし、“幕営手形”と書かれたプレートを手にどこに張ろうかと見渡し、(晴れたら)見晴らしが良さそうな端の方に決めました。今回のテント場は底が平らで広さも十分なので、テントが張りやすい! ひと通り片付け、Aさんを迎えに行こうと思ったころ、ちょうど下から上がってくる姿が見えました。他の人と話をしてしばらく休んでいたら体力も回復し、歩き始めたら意外と早く付いたとのこと。荷物を置いたあとは小屋の前の稜線で他の登山者と話し込んだり、近くの岩の上で寝たりしていました。私はテントで休んだり小屋の周りをぶらぶらしていました。相前後してインスタントの昼ごはんを食べたり、これまたインスタントのコーヒーを飲んだりしているあいだも、あたりは相変わらず真っ白で、小屋の建物の形がうっすらとしか見えなくなるときもあったほどでした。
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燕山荘 |
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燕山荘のテント場 |
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稜線の東側からガスが上がってきています |
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稜線の西側は青空が見えるところも |
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稜線に建つ燕山荘 |
北アルプスの夕焼け
そして夕方、テントから外を覗いてみると、あたりを覆っていたガスが薄くなっていました。稜線に出て西の方を見ると、谷を挟んだ向こう側に連なるアルプスの山々はシルエットとなり浮き上がり、そこへ沈みかけている太陽の光が見えました。ガスは薄くなり、山々のシルエットがはっきりとしてきます。
しばらく見ていましたが、日が沈むとあたりは急に薄暗くなり、風に吹かれた体は冷えてきます。
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テントから外を覗いてみると |
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山に沈む夕日 |
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槍ヶ岳と残照 |
星空と北アルプスの山々
テントに戻ってインスタントの夕飯を食べ、暗くなった頃に外を見ると、雲やガスはすっかりなくなり、満天の星空。下の方には街の明かりも見えます。小屋まで行ってみると、月明かりの下に槍ヶ岳と北アルプスの山々がシルエットとなって見えていました。とても美しい光景です。
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槍ヶ岳と北アルプスの山々 |
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テント場と燕山荘 |
ずっと見ていたいところですが、体も冷えてきたので、テントに戻って寝袋に入り、ばさばさという風の音を聞きながらやがて眠りにつきました。
2日目に続きます。
2016年9月中旬 北アルプス表銀座(燕岳・大天井岳)
同行者:Aさん
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