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霧の両神山へ

両神山

埼玉県の秩父や小鹿野のあたりは、しだれ桜、彼岸花、ダリア園、丸神の滝、蕎麦、秩父夜祭、そして日本百観音のうちのひとつである札所巡礼と、もう何度も訪れているところですが、その道中の折々で、遠くの方にぎざぎざした屏風のようなシルエットの山が見え、何という名前の山なのだろうかといつも気になっていました。晴れていればとても近くに見え、そうでないとまったく見えないその山が、両神山だと確信を持てたのは、初めて秩父を訪れてから、かなり年が過ぎたころでした。

修験の山

両神山は“りょうかみさん”と読みますが、“ふたかみやま”と読むこともあるらしく、私は後者の読み方が好きです。
 登山道は、遠くから見えたぎざぎざの岩場を登るコースもありますが、私が歩いたのは日向大谷から山頂を目指す一般的なコースです。何箇所か急な坂や鎖場もありますが、それほど危険な箇所はなく、けれどもコースタイムは長めです。
 またこの山はかつて修験の山で、今回使った登山道の所々には石像が安置され、山頂近くにはお堂もあります。岩場を登るコースの写真を見ていると、鎖場ばかりのとても荒々しい道で、いかにも修験道の山だと感じます。

幻想的な登山道

天気予報は曇り。さすがに梅雨が明ける前なだけはあり、登山日和とはいきませんが、雨は降らないようなので、思い切って出掛けます。両神山は日本百名山で、多くの人で混むらしいので、朝の早い時間に駐車場へ着くように車を走らせました。秩父からさらに山の奥へと走り駐車場へ到着すると、車は数台停まっているだけで、さすがにこんな天気で登る人はほとんどいないのだろうかと思いながら準備を始めます。
 靴紐を締め道路を上がっていくと上にも駐車場がありました。ここは有料駐車場のようでここにも数台停まっていました。登山届を箱に入れ山の中へと進んでいきます。
 すでに天気は下り坂、霧に包まれ幻想的な雰囲気ですが、霧雨が降っているのか霧の中を歩いているのか、体が湿ってくるのでザックにカバーをかけ、レインコートを着込みます。
両神山
霧に包まれた登山道
苔むした沢沿いを歩いたり、川を渡ったりします。
両神山
沢沿いの登山道
登山道にはいくつか石像が安置してあります。
両神山
不動明王
ずっと霧の中を歩きます。
両神山
霧に包まれた登山道
川を下に見たり、弘法の井戸という湧き水に力をもらったりしながら、ずっと登っていきます。
両神山
霧に包まれた登山道
両神山
修験道に関係のある石像?
両神山
緑のもみじが綺麗です。

急登や鎖場の道

清滝小屋という今は避難小屋として使われている小屋の裏側の道を登り、登りつめた場所は、見晴らしはほとんどありませんが、このあたりから登山道の雰囲気が変わってきます。
 登山道は急になり鎖場も出てきます。このコースはそれほど危険な個所はないと書きましたが、今日は地面が濡れ、岩が滑りやすく、足元に気を付けながら登ります。
両神山
登山道の雰囲気が変わってきます
両神山
岩が濡れ滑りやすい鎖場

両神神社

やがて神社の鳥居が目の前に現れます。ここが両神神社で鳥居の脇にある石像は狛犬ではなく山犬(狼)です。三峰神社をはじめ、このあたりの神社では同じように山犬の石像が安置されていたりします。
両神山
両神神社と山犬(写真の右と左)
両神山
両神神社の山犬

山頂を目指して

両神神社の隣には御嶽神社のお堂があります。ここからしばらくはアップダウンも少なくなり、木々に覆われた稜線を歩いているのだと感じます。そしてまた岩場や鎖場を登っていくと頭上が明るくなってきました。晴れていれば何かしらの展望があるのでしょうが、ガスに覆われ真っ白で、近くの木や岩以外何も見えません。
 そして最後の鎖場。足を置く場所があるので鎖を使わなくても登れます。

両神山
両神山山頂への最後の鎖場

両神山山頂(剣ヶ峰)

最後の鎖場を上がると両神山の山頂(剣ヶ峰、1,723m)です。狭い山頂で、すでに何人かの人が休憩していました。ここまでずっと森の中を歩いてきたので、爽快感があります。
 あたりはガスで白く覆われていますが、少し待っていると青空が見えるようになりました。もっと景色が見えるようになるかと期待してしばらく待っていましたが、ほとんど変化がなさそうなので、下山することにしました。

両神山
両神山山頂付近
両神山
両神山山頂付近から。これ以上ガスがとれることはなかった。

下山

下山途中には何人かの人に会いましたが、やはりこんな天気だからか、多くはありません。けれども鎖場や狭い道では待ち時間ができるので、コースタイムには少し余裕をもたせたほうがいいです。とくに人気の山は大人数のパーティーと会うこともしばしばなので、時間は余計にかかるのを前提にするのがいいと思います。
 山頂から登山口までの下りは、手元にあるガイドブックのコースタイムで3時間はかからないことになっていますが、登りも時間がかかるためかとても長く感じました。
 誰もいない薄暗い沢沿いの道をひとりで歩いていると、心細くなってくることもありますが、これが山を歩くということなのかという感覚が湧いてきます。

 帰りには清滝小屋の中を覗いてみました。今は無人で山小屋としては使われていませんが、中は広く綺麗です。またこのあたりではテントも張れるようです。トイレもあります。
両神山
両神清滝小屋
またこれは余談ですが、登山道にあったこの少し壊れた石像は弘法大師の像なのかと思っていましたが、台座には木曽の御嶽山で見るようなマークが彫られていました。普寛行者の像なのでしょうか?

両神山
弘法大師の像? 普寛行者の像?
山道にはいくつか花も咲いていました。
両神山
山道で見かけた花
両神山
駐車場の近くで見かけたヤマユリ

あこがれの両神山

いつも遠くから眺めているだけだった両神山。登山を再開してからはぜひ行きたいと思っていた山でした。今回は天気があまりよくなかったため霧に包まれた幻想的な雰囲気で、沢を渡ったり、鎖場を登ったり、とても充実した山登りでした。けれども山頂からの見晴らしがあまりよくなかったので、今度は晴れた時にあらためて登ろうと心に決めて、駐車場をあとにしました。
2016年7月下旬 両神山

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