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初秋の秩父路

初秋の秩父路

横瀬の寺坂棚田 秩父はアニメの舞台(いわゆる聖地)になっているそうで、最近は若い人もよく訪れているようだ。そういえば、飯能から秩父へと向かう道の途中で、自転車に乗った中学生くらいの男の子たちを見かけたが、彼らもひょっとして秩父へと向かっていたのかもしれない。正丸峠を越えなければならないし、またそれまでもずっと上り坂が続くので、結構大変だと思うが、もし秩父を目指していたのなら、この体験はきっといい思い出になりそうで、少しうらやましくもなった。ただ交通量が多く、冬は道路も凍結するので、事故だけには気を付けてもらいたい。

 正丸峠を越え、左手に武甲山が見えてくると、工場の煙突が見え、急に町の風景が目の前に広がってくる。今回は最初に、横瀬町にある寺坂棚田を訪れることにしていた。ここは春にも訪れた場所で、その時はちょうど田植えの最中だったが、気が付けばもう季節は秋の彼岸。彼岸花と刈入れ前の稲が見られるのではないかと期待しての訪問だ。
 農協の脇の道を入り、坂道を上がっていくと、ちょうど棚田の上を走る道路に出ることができる。車を降りて棚田を見下ろすと、もう刈入れが終わり稲が干されている田んぼもあり、またちょうど刈入れをしている田んぼもあった。そしてそれらの田んぼと田んぼの間には彼岸花の紅い花が点在、あるいは群生して咲いていた。秋の日差しを受けた黄金色の稲穂と、田んぼの土手に生える草の緑、そしてこの彼岸花の紅い色が、美しい初秋の日本の原風景を思わせる。目線の先には武甲山の雄々しい姿があり、まだ夏の気配を残した水色の空を飛ぶからすの影。なんとも穏やかな空気が流れていた。
 棚田の間の道を歩き、刈り取って積まれた稲を見ていると、これは豊かな象徴なのだという感覚が湧いてきたが、なんということはない、五円玉の絵柄を無意識に想像してのことだろう。足元ではこおろぎがたえず鳴いているが、そのなかにすずむしの声も聞こえていた。飼われているものではなくて、自然の中ですずむしの声を聞いたことがあっただろうか。

両神山麓のダリア園 秩父は四季を通じていろいろな花を愛でることができるが、今の季節は、秋の七草やダリアが楽しめる。何年か前には秋の七草巡りをしたので、今回はまだ行ったことのないダリア園に行くことにした。
 ダリア園は両神の方の山間にあるようなので、秩父の街なかからは少し距離がある。そこで、昼も近くなってきたこともあり、同じ方面にある道の駅両神でそばを食べることにした。ここのそばも好きでよく食べに来るが、店の素朴な感じも気に入っている。
 秩父十三佛の釈迦如来の寺を右手に、山間の道路を進んで行くと、山の斜面を活用したダリア園が見えてきた。観光に来ている人も多いようだった。ダリア園は町田ダリア園(東京都)に何度か行ったことがあったが、その後、特に理由もなくダリア園からは足が遠のいていた。ダリアの花は好きで、鉢で育てていた時期もあったほどなので、久しぶりにダリアの花をたくさん見ることができそうで楽しみだ。
 ダリア園を外から見ていると、こんなものかなと思っていたが、中に入ると、垣根の木で隠れていた部分が見えるようになり、先ほど想像していたより園内はとても広く、またダリアの種類も花の数も数え切れないほどだった。
 夏の勢いを感じる太陽に照らされながら、花から花へと飛び回る虫たちのように、あちらの花、こちらの花と、カメラのシャッターボタンを押し続けていた。フィルムで写真を撮っていた昔は、フィルムがもったいないので、もっとじっくりとシャッターを落としていたが、さて、その頃と比べて写真を撮るのはうまくなったのか、へたになったのか。少なくとも、違う感覚で撮っているのは事実だろう。
 シャッターボタンを押す時は無意識に息を止めるため、また強い日差しも浴びていたため、気が付いた時にはずいぶんと体力を消耗していたようだ。道路を挟んだ斜面の上側にもまだたくさん咲いていたが、もうくたびれてしまって、下から眺めるだけで満足してしまった。これだけたくさんのダリアを見ることができたのは、新たな発見だった。切り花も買って帰りたかったが、帰りの道中で悪くなってしまいそうだったので、今回はやめておくことにした。

童子堂と秩父神社 秋の彼岸ということもあり、どこかの寺にお参りに行きたいと思っていたので、帰り道に秩父札所二十二番の童子堂に立ち寄った。この寺の仁王門に安置されている阿吽の仁王像は、とても愛嬌のある像で、すでに傾きかけた太陽の光に照らされた姿を見ていると、心身の凝り固まっているものが緩んでいくようだ。そこへちょうど、黄色い帽子をかぶってランドセルを背負った子どもが通りかかり、懐かしい昔の思い出を見たような気がした。
 荒川をまたぐ大きな吊り橋を渡って秩父の街に入り、秩父神社にも参拝に行った。街なかに入るとさすがに人の数も多くなってくる。神社では、今まであまり見なかったような若い人たちもたくさん見かけ、やはり若い人たちがいると活気を感じる。秩父夜祭ももうすぐだが、今年は平日にあたるため行けそうにないのが残念だ。

夕焼けの棚田 道の駅ちちぶで休憩し、だんだんと薄暗くなってきたため、いざ帰ろうとする、その時になってふと思い立ち、夕方の棚田を見に行くことにした。
 午前中に訪れた同じ場所から眺めると、棚田の稲穂と彼岸花は、夕方の光でより深みのある色になり、そして太陽はちょうど山の端に沈もうとしていた。刈り入れをしていた田んぼは、すでに稲が干され、人の姿もまばらだった。
 武甲山のシルエットを背景に、足元ではやはり、こおろぎやすずむしが鳴き、この夏の猛暑や都会の喧騒を忘れさせてくれるようであった。

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