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初夏の秩父路(その1)

 台風と梅雨前線の影響で、前日まで雨や風の天気だったが、家を出る頃は青空と白い雲の爽やかな空が広がり、訪れた秩父は初夏の陽気だった。

 最初に訪れたのは、正丸峠(トンネル)を越えて秩父市街との中間あたりにある寺坂棚田。秩父には数十回来ているが、ここは初めて訪れた。この土地では鎌倉時代から稲作が行われていたそうだ。今日は武甲山がよく見える。一時期は耕作放棄地となり草木が生い茂っていたそうだが、現在では田んぼの所有者とボランティアの手により田園風景が復活している。今日も草刈などの作業に汗を流している人々の姿が見えた。

 次は、春の桜の時期に訪れた清雲寺とその隣にある若御子神社を訪れた。
 桜の時期とは違い、若御子神社の境内は静まり返り、神社の清々しい空気に満たされていた。
 神社の入口に安置されている狛犬は、山犬だろうか。
 清雲寺は境内に植えられた沢山の枝垂桜で有名だが、花の咲いていない今の時期に訪れる人はいないようだった。
 樹齢六百年といわれる古木も濃い緑の葉に覆われていた。
 清雲寺、若御子神社を後にして見た、鳥居へと続く道。夏至を過ぎた夏の日差しが降り注ぎ、幼少の頃に見たのかもしれない、こんな道に心を惹かれる。
 大気が不安定なのだろう。秩父盆地の頭上には青空が見えていたが、盆地を取り囲む山の頂には暗い雲がかかっていた。
 両神方面へと続く道路。こんな道と青空が好きだ。
 道の駅両神で蕎麦を食べ、次は毘沙門水を訪れた。合角(かっかく)ダムの上流にあり、名水百選にも選ばれたそうだ。カジカガエルが鳴いていた。 
 水はそれほど冷たくはなく、とてもまろやかな飲み心地だった。
 次は毘沙門水へ行く時に通り過ぎた合角ダムへ立ち寄った。あまり雨が降らないので、水位も下がっているようだった。ダムの下流にある集落と山々、そして空。
 変わりやすい空だったが、少しの雨粒が落ちてきただけで、雨になることはなかった。

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