今年も秩父へ桜を見に訪れた。秩父へは夜祭や札所巡礼やただの観光などでもう何度も行っているが、桜を見に訪れたのは二〇一一年の震災の年が初めてで、今回が三度目だ。 今日は朝からしとしとと雨が降り、花冷えの花見なった。花見というより、桜そのものを愛でたいので、「観桜」という言葉を使いたい。 訪れたのは昨年、一昨年と同様、札所二十九番の長泉院と清雲寺だ。清雲寺の境内には種類の違う樹も何本もあるが、一番古いものは樹齢六百年余り。六百年前といえば室町時代。室町時代から今日まで樹勢を良好に保たせるだけであっても大変なことだろうと思うが、その樹が毎年花を咲かせているのだから、その生命力の力強さ尊さには畏敬の念を抱かざるをえない。 雨が降るのを“あいにくの天気”だとよく言うが、雨でしっとりと濡れた桜の花びらは喩えようもなく美しく、むしろこの雨の日の巡り合わせを幸せと思いたい、そんなことを感じた秩父の桜であった。