世田谷美術館で開催されている『冒険王・横尾忠則』展へ先日行ってきました。東京では土・日の2日間だけになってしまいましたが、行こうかどうか悩んでいる方や、興味の無い方でもぜひお勧めしたい展覧会です。
とても数多くの作品が展示され、会場に着くまでは「作品に圧倒され疲れ果てて帰るんだろう…」と思っていましたが、作品を見始めるとそんなことはなく、画家の発散したエネルギーが全身の穴からじわじわと沁み込んで、血管を巡り、体内を駆けていくように、体は疲れても気力は充実していくようでした。
横尾氏が昔の作品の事を『昔に光った光を今見ている』というような事を仰っていましたが、そう思って空の天体と比べてみると、灼熱の太陽もあれば、その光を冷たく反射する月があり、遠くには銀河があり、星団があり、生まれたばかりの青白い星や、破裂しそうな赤い星、中にはブラックホールやまだ届いていない星の光もあるのかもしれません。『夜空に輝く星々はそれぞれ違う時代にぴかっと光った光だ』というのは宇宙図に教えてもらったものですが、そういう様々な時代の作品が散りばめられた今回の展覧会。
作品にすぐ近くまで近寄れるのも素晴らしいと思います。生きた芸術という感じがします。不慮の事故があったら…とも思いますが、それもまた芸術なのでしょうか?
作品数はとても多くそれぞれに感想を書くと終わりが無い、というより書けないので、特に印象に残ったひとつだけ取り上げます。
瀬戸内晴美氏が新聞に連載された『幻花』。その挿絵の原画が展示されていましたが、この白と黒だけの小さな世界にすっかり魅了されてしまいました。
雨の静けさ、風の流れ、空の静寂、炎の叫び、文字の踊り、、、挿絵を見ているだけで一巻の書物を紐解いたような、また紙のキャンバスという箱庭の中で物語が展開されているような、紙とペンだけで世界はいくらでも広がるということを改めて思い知りました。
この仕事だけに一生をかけてもいいのではないかと思える作品群でありながら、しかもその作品を難なく仕上げ、そしてその上遊び心まで入れている、という雰囲気がこの展示スペースからは漂っていました。
他の多くの作品で印象に残っているものはたくさんありますが、とりわけこの『幻花』の挿絵には強く衝撃を受けました。
糸井重里氏の『ほぼ日刊イトイ新聞』の特設ページで、横尾氏と糸井氏が美術館を歩きながら対談されています。この特設ページを前もって読んでいたので、展覧会がさらに楽しめたのではないかと思います。何も情報を持たないまま一度展覧会へ行き、情報を集めてからもう一度足を運ぶというのも面白いかもしれません。
東京では残念ながら15日まで、次は兵庫県立美術館で開催されるそうです。
展覧会を思い出してずっと思うことは、横尾忠則氏に描けないものは無いのではないかということです。引き出しの数は無数にあり、そしてその中には普通の人間が開けてはいけない引き出しもあるような気がして、ちょっと怖い気もします。
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写真は展覧会のチラシとお土産のガチャポンの魔除猫です。黒光りしている猫は何を思惟しているのか、この角度から見るとなかなかいい表情をしています。チラシの少年もひとりこちらに気付いている?!
とても数多くの作品が展示され、会場に着くまでは「作品に圧倒され疲れ果てて帰るんだろう…」と思っていましたが、作品を見始めるとそんなことはなく、画家の発散したエネルギーが全身の穴からじわじわと沁み込んで、血管を巡り、体内を駆けていくように、体は疲れても気力は充実していくようでした。
横尾氏が昔の作品の事を『昔に光った光を今見ている』というような事を仰っていましたが、そう思って空の天体と比べてみると、灼熱の太陽もあれば、その光を冷たく反射する月があり、遠くには銀河があり、星団があり、生まれたばかりの青白い星や、破裂しそうな赤い星、中にはブラックホールやまだ届いていない星の光もあるのかもしれません。『夜空に輝く星々はそれぞれ違う時代にぴかっと光った光だ』というのは宇宙図に教えてもらったものですが、そういう様々な時代の作品が散りばめられた今回の展覧会。
作品にすぐ近くまで近寄れるのも素晴らしいと思います。生きた芸術という感じがします。不慮の事故があったら…とも思いますが、それもまた芸術なのでしょうか?
作品数はとても多くそれぞれに感想を書くと終わりが無い、というより書けないので、特に印象に残ったひとつだけ取り上げます。
瀬戸内晴美氏が新聞に連載された『幻花』。その挿絵の原画が展示されていましたが、この白と黒だけの小さな世界にすっかり魅了されてしまいました。
雨の静けさ、風の流れ、空の静寂、炎の叫び、文字の踊り、、、挿絵を見ているだけで一巻の書物を紐解いたような、また紙のキャンバスという箱庭の中で物語が展開されているような、紙とペンだけで世界はいくらでも広がるということを改めて思い知りました。
この仕事だけに一生をかけてもいいのではないかと思える作品群でありながら、しかもその作品を難なく仕上げ、そしてその上遊び心まで入れている、という雰囲気がこの展示スペースからは漂っていました。
他の多くの作品で印象に残っているものはたくさんありますが、とりわけこの『幻花』の挿絵には強く衝撃を受けました。
糸井重里氏の『ほぼ日刊イトイ新聞』の特設ページで、横尾氏と糸井氏が美術館を歩きながら対談されています。この特設ページを前もって読んでいたので、展覧会がさらに楽しめたのではないかと思います。何も情報を持たないまま一度展覧会へ行き、情報を集めてからもう一度足を運ぶというのも面白いかもしれません。
東京では残念ながら15日まで、次は兵庫県立美術館で開催されるそうです。
展覧会を思い出してずっと思うことは、横尾忠則氏に描けないものは無いのではないかということです。引き出しの数は無数にあり、そしてその中には普通の人間が開けてはいけない引き出しもあるような気がして、ちょっと怖い気もします。
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写真は展覧会のチラシとお土産のガチャポンの魔除猫です。黒光りしている猫は何を思惟しているのか、この角度から見るとなかなかいい表情をしています。チラシの少年もひとりこちらに気付いている?!
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