スキップしてメイン コンテンツに移動

雪の国への旅(2日目)

雪国への旅

柏崎の朝 夢の中で夢を見ていた。寝苦しい夜が明け、部屋のカーテンを開けると、柏崎の街は白く雪に覆われていた。
 米山も見えていたが、出発の支度をしているうちに、雪―もしくはあられだろうか―が降り、近くの町並みさえ霞んで消えてしまった。
 昨晩買っていたパンを頬張り、急ぎチェックアウトを済ませる。駅はホテルの目の前にあるが、アスファルトにうっすらと積もった雪に足をとられそうになる。

日本海を走る 風の影響で電車は少し遅れていたが、駅のプラットフォームで冷たい風に吹かれながら待っていると、やがて顔に雪をかぶった車両がやってきた。

 電車に乗り込み、足元のヒーターの暖かさを感じながら、車窓を流れる、昨日より穏やかな海を眺めていた。佐渡は今日もなかった。波打ち際に打ち寄せる波のしぶきが、もやのようにわき上がっていた。

 雪はもうやんだかに思っていたが、少し内陸を走っていると思ううちに、窓の外は白くなり、止まった駅には雪が積もっていた、何時間も電車に乗っている訳ではないのに、天候は次々に変わっていく。

 再び遠目がちに海が見えるようになり、開けた空の向こうに白い山が見えてきた。北アルプスの北の端に当たるのだろうか、それとも富山の山なのだろうか。川を渡ると直江津の駅に着いた。
 次は長野駅に向かってここで乗り換える。私の乗る電車はプラットフォームの反対側に待っていたが、駆けるようにして階段を上っていく人達もいた。

日本海から内陸へ 直江津駅から信越線に乗り南に向かうと、風景はがらりと変わった。空はすっきりと晴れ渡り、さわやかな朝日の光が降り注ぐ。照らされた雪の形から、このあたりにはおそらく田園風景が広がっているのだろう。

 車窓の右手には、雪に覆われた高い山―おそらく妙高山だろう―が聳えている。電車がぐるりと大きなカーブをまわると、走ってきた2本のレールが見えるが、ほとんどが雪に覆われた銀世界の風景が広がっていた。

 黒姫高原、野尻湖、戸隠、名前だけ知ってはいるが、どんな土地なのだろうか。一度訪れてみたいものだ。

峠を越える 人家や工場とおぼしき建物が多くなってきたと思っていると、まもなく長野駅に着いた。ここで篠ノ井線に乗り換え松本に向かう。時間はちょうどお昼前。駅そばを手にし、まだ止まっている車内で食べている人達がいた。だしの美味しそうなにおいが漂ってくる。
 走り出した電車はやがて川中島駅に着いた。このあたりがかの有名な合戦場の跡なのだろうか。川は見えないが、大きな中洲のような場所なのだろうか。そんなことを考えているうちにも電車は走り出し、いろいろな考えや思いは置き去られていくようだ。

 そして、だんだんと街並みを下に見るようになり、気が付けばずいぶんと標高が高くなっていた。頂上とおぼしきところで一度止まって少し戻る。スイッチバックした先にあったのは姨捨駅の開放的なプラットフォームで、長野の街並みを遠くに一望できる展望台となっていた。電車の行き違いをするために少し時間があり、車両のドアを開け、雪の上に降り立つ。暖房で少し暖まりすぎた体に、冷たい空気が心地よい。遠くの山々までよく見通すことができる。

 その後電車は、雪のほとんどない、見慣れた田舎の風景を走っていく。松本の駅もあと少し、次に車窓の右手に見えてきたのは、遠く雪化粧をした北アルプスだ。電車の下を流れている川は安曇野の犀川。線路と川の間を走る道路には雪の気配すらなく、聞くところによれば、松本はそれほど雪は降らないそうで、さながら、国境の長い峠を越えるとそこにはまだ秋の気配が残っていた、といったところだろうか。

松本の街 初めて訪れた松本の駅前は、とても活気があった。ホテルのチェックインにはまだずいぶん早かったが、準備が出来ていたので、鍵を受け取り部屋に入る。荷物を下ろし窓辺に向かうと、眼下には松本駅があり、行き交う人々と、プラットフォームには入線してくるいろいろな電車が見える。あれは急行あずさ、向こうは上高地方面に向かう電車だろうか。奥にある北アルプスの山並みが近く感じられる。

 ホテルを出て昼食をとり、松本城に向かった。国宝の松本城は、なるほど美しい姿をしていた。澄んだ空をたくさんの鳩が無秩序に飛び交う。正月を控えているため、城の門は閉められ、中へ入れなかったのが残念だ。

 開智学校や司祭館の建物は、明るい色調で調えられており、異国の雰囲気を感じさせるものだった。城下町の街並みを見ながらホテルへ帰る途中、5HORN(上高地五千尺ホテルグループ)でコーヒーとケーキをいただく。日陰に入ると風が冷たい。

 ホテルの部屋に戻りテレビをつけると、鉄道貨物の番組をやっていた。そういえば松本へ来るまでにもコンテナ貨物と何度かすれ違っていたことを思い出す。

松本の夜
 明日は旅の最終日。時刻表をめくり、街を歩きながら考えていた行程を調べてみるが、目的地近くの駅までは行けても、そこから先が困難だとわかり、行き先からあらためて考えなおす。ようやく目処が立った頃には、窓の外はすでに暗くなっており、駅へ向かい食事をとり、朝食用のパンを買う。さすがに夜は冷え込み、駅の温度計は1℃を示していた。
 駅ビルではやはり長野だけあり、リンゴがたくさん売られていた。ピンクレディという初めて聞く名前のものが売られていたので、ついつい買ってしまう。旅の途中で食べることはなく、とうとう家にまで持って帰ってしまったが、少し強い酸味の中に甘さが感じられる、リンゴ本来の味が感じられるような美味しいものだった。

【行程】
・柏崎駅→直江津駅→長野駅→松本駅

コメント

このブログの人気の投稿

飯盛山のニッコウキスゲ

飯盛山のニッコウキスゲ 想い出のニッコウキスゲは  自分の中の想い出のニッコウキスゲといえば、ビーナスライン、車山高原のニッコウキスゲだったのですが、シカに花芽を食べられてしまうようになってからは、ずいぶんと数が減ってしまいました。  その後あちらこちらでニッコウキスゲやアヤメがシカに食べられて、群落が見られなくなったという話をよく聞くようになり、柵を設けて植生を保護しているところも多いようです。尾瀬のニッコウキスゲもシカに食べられていると聞いていましたが、今はどうなのでしょうか。 大盛山のニッコウキスゲ  ここ、清里や野辺山の近く、八ヶ岳の東側にある飯盛山 (めしもりやま) は冬山も含めて何度か登っていますが、ニッコウキスゲが咲くのは初めて知りました。正確には飯盛山の隣の大盛山の斜面に咲くそうです。  梅雨の合間で、しかも標高が低くとても蒸し暑いのですが、1時間ほどかけて登り、鹿よけの柵の扉を開けると、ニッコウキスゲが山頂付近の斜面を埋めるように咲いていました。  登りの途中ですれ違った人から、黄色い絨毯になっているよと教えてもらっていたのですが、これほどの群落を見たのは初めてかもしれません。 ニッコウキスゲの丘 ニッコウキスゲ ニッコウキスゲ  このままずっと保護していけば、斜面の下の方まで黄色で埋め尽くされるのかと、そんなことを想像してみました。

DS検定★受験記

データサイエンティスト検定(リテラシーレベル) という検定を受験してきました。 DS検定★とも呼ぶそうです。 これは世の中にあふれるビッグデータなどをビジネスに有効に活用していきましょうという知識を問うもので、見習いレベルのものではあるのですが、IT関係全般のITパスポート、AIやディープラーニングなどのG検定と並んで、DX推進パスポートのうちのひとつです。 これまで、ITパスポート、G検定の順に勉強、受験してきましたが、DS検定★も機械学習やAIと密接な関係にあるので、この順番でよかったなと思っています。 実際の試験 試験はCBT方式で、自分で選んだ試験会場のパソコンを使って、自分のタイミングで始めます。これまで何度かこの方式で受験していますが、あまり気兼ねもなく楽でいいです。ただ、試験中に他の人の出入りがあるので、会場によっては気になります。また、早めに場所と日時を決めて申し込みをしておかないと、土日などはすぐに埋まってしまいます。 試験時間は100分で100問。見直しの時間はできたものの、最後の方は気力が萎えてきました…。 参考書 今回使った参考書は、 1.『合格対策データサイエンティスト検定[リテラシーレベル]教科書』(リックテレコム) 2.『徹底攻略データサイエンティスト検定問題集[リテラシーレベル]対応』(インプレス) 3.『最短突破データサイエンティスト検定(リテラシーレベル)公式リファレンスブック第3版』(技術評論社) で、1と2をメインに使って勉強しました。 今回の試験から試験範囲が新しくなり、それに対応したこと、1、2だけでそもそも試験範囲を網羅できているのかがいまいち不安だったことから、5月に出たばかりの3を追加しました。索引や参照がよく分からないものもありましたが、1、2で理解があやふやだったものが少し分かるようになったものもありました。あとは、ネットの模擬試験(100問)が試験までに間に合ってくれてよかったです。 勉強はこの3冊をやっておいてよかったなと思います(合格の基準が分からないので、まだ合格したのかどうだか分かりませんが…) Python こんな感じで勉強をして、DS検定★を受験してきました。 これまでの検定とは関係なく、RaspberryPiでPythonを少し触ったりしていたので、今度はそちらももう少し分かるようになりたいなと思...

魚料理ほか

魚料理ほか ごまさばの生姜焼き  干物はよく食べたりしていますが、生の魚を調理するのはなんだか久しぶりです。  ごまさばが安かったので買ってきました。単純に塩焼きでもよかったのですが、ちょっと変わったものがないかとネットを探していたら、生姜焼きというのがあったので作ってみることにしました。  塩をふって、小麦粉をまぶして焼き、生姜、酒、みりん、醤油をかけながら焼けば出来上がり。魚は意外とあぶらが乗っていたのですが、さっぱりとしておいしかったです。 ごまさばの生姜焼き 冷凍バナナ  冷凍バナナは子供の頃に食べた懐かしい記憶がありますが、最近はアイスを買うのをやめ、冷凍バナナにしています。  ゼリーなどを作るときに、砂糖の量にびっくりしてしまい、きっとアイスにもかなりの量の砂糖やいろんなものが入っているんだろうなと思いつつ、好きで食べていたのですが、暑くなってきてバナナの熟し方が激しくなってきたので、久しぶりに冷凍バナナを作ってみました。すると、とても甘くておいしかったので、いっそのことアイスをやめてバナナに置き換えてみました。子供の頃と比べて最近のバナナは全体的に甘い気がするので、それで冷凍しても甘くておいしいのかもしれません。  バナナは適当な大きさに切って冷凍しておき、そのままで食べたりもしますが、よくヨーグルトとハチミツをかけて食べています。冷たいバナナが食べているうちにやわらかく溶けてきて、とてもおいしいです。 猛暑  連日の猛暑で、気温に対する感覚がおかしくなっている気がします。夜になっても30℃あるのは普通だし、日中も35℃ないとそんなに暑くないのではないかという気になってしまいます。クーラーをつけていないともうやっていられないのですが、それで風に当たりすぎてしまったせいか、体調不良になってしまいました。  そういえば最近は聞かなくなりましたが、電力の逼迫状況などはどうなのでしょう…。 スズメバチ  去年、玄関脇にアシナガバチが巣を作って駆除してもらったのですが、今年はキイロスズメバチっぽいものがうろうろしていました。単独行動っぽいのですが何度も刺されるわけにはいかないので、去年買っておいた蜂用の殺虫剤を使いました。さすが蜂用だけあって強力で、飛んでいたのが地面に落ちましたが、それでもまだ動いている生命力の強さ。