桜の花が散りゆくのが信じられず、まるでそれを追い求めるかのようにして、再び秩父を訪れた。 先週は雨の観桜だったが、今日は嵐の前の観桜だ。爆弾低気圧なるものが西の方から近付いているらしいが、札所二十九番の長泉院に着いた頃はまだ穏やかであった。長泉院の境内では、しだれ桜が満開になり、ミツバツツジも満開であった。 清雲寺のエドヒガンザクラは散り、しだれ桜が咲いていると聞いていたが、想像していたよりも花はまだ残っており、桃やレンギョウの花も綺麗であった。 車椅子に乗ったおじいさんが、おそらく子供だろうか、介助の人といっしょに何かを話しながら桜を眺めている光景を目にすると、何ともいえない心持ちになり、目に涙をためながらシャッターを切っていた。 写真が小さいのでよく分からないかもしれないが、この時は、役目を終えた白い花びらが、突如押し寄せる一陣の風に舞い、あたり一面が桜吹雪となっていた。 最後に昌福寺を訪ねた。ここは訪れる人も少なく、静かな山間の風情が感じられた。 秩父を離れた三時頃より雨が降り出した。今晩から明日の朝にかけて嵐になるという。このあたりの桜の花も、もうそろそろ見頃を終えるのだろう。